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先日あったこと

先日お伺いさせていただいた生徒さんの犬は、ブリーダーの引退犬との事でした。

『3歳になる黒柴犬』とのことで「なかなか懐いてくれず、散歩にも行けない」との相談。

それでは私の犬と一緒に伺って、少しずつ外の世界に慣れるように導いて行きましょう。
と、百戦錬磨の看板犬「くま」ちゃん連れてその黒柴犬に会いに行きました。

会ってみて、まず驚いたのが「3歳の黒柴にしては穏やかな子だな」と言う印象。
もっとやんちゃな子が多いのに、随分と物静か。

しばらくの間、おやつをあげたりしながら仲良くなろうと時間をかけて距離を縮めて行きます。

私たちに不安を抱かなくなったのを確認してから、家族の方にリードを付けてもらいます。

さて、『リードを付けると動かなくなってしまう』と聞いていたので、どの程度動かなくなるのかな?
と、観察してみれば、少しは動ける様子でした。

これならば行けるかな?
そう感じた私は、少しずつその子に近づきながら抱き上げてみます。
驚いたことに、抱き上げられても暴れたりしませんでした。少しは抵抗するかな?と考えていたので。

大人しく抱っこされているので、そのまま敷地の外に連れ出します。
すると、急に体が強張り、うずくまって動けなくなってしまいます。

そこで無理に引っ張ったりすると、さらに外の世界が怖くなりますので、ここは落ち着くまで待ちます。

しばらくしたら、隣にいる「くま」ちゃんの方へ動いてくれました。
その時を逃してはいけません。
動き出したら、その勢いで家まで帰らせます。

『自分で外の世界から家に帰ることができた』これこそが、犬の自信に繋がります。
自分の足で歩くことができたのだから、とことん褒めてあげました。

その次は、もう少し距離を伸ばします。伸ばすといっても5メートルくらいです。

少し歩けるかな?と、思ったら、車が近くを走りました。
今までブリーダーのところに居た子なので、近くを走る車に驚いてしまいその場から動けなくなってしまいます。
励ましながら「少しずつでも歩こう?」と、誘ったのですが今回はダメでしたので、抱っこをして門扉のところまで連れて行きます。
そうしたら、自分から歩いて家の方まで向かえるのです。
と言うことは、今までの生活ではあらゆる刺激から隔離された生活をしていた。と言う事なのでしょう。

それにしても、3歳でこんなにも好奇心が無く、車が通るだけで怯えてしまうのは問題です。
私はその子を抱き上げて「大丈夫だよ。私も「くま」ちゃんも、君の友達になりに来たのだから」と、伝えます。

安心してくれたのか、だいぶ脱力してくれたので、歯のチェックをさせてもらいました。

ここで私は驚きます。

3歳の歯じゃないのです。歯石はがっちりついている。犬歯はボロボロ。歯の数もだいぶ少ない。

これは、ブリーダーではなく
悪質な繁殖屋の所の引退犬だ。

と、感じたのです。
3歳の柴犬ならば、もっと元気があって良いはずだと感じたのはこれが原因でした。
おそらくですが、3歳ではありません。もっと年上です。少なくとも7〜8歳。もっと上かもしれません。

酷い話です。
そんなに歯が悪くなるまでケアもせずに、更には年齢を偽って他人に押し付ける。

「一緒に散歩をして楽しく暮らしたいんだけど、どうすれば良いかな?」
そんなことを言ってくださる様な人に、正確な情報を与えずに不要になった犬を押し付ける。
そんな繁殖屋がいまだに居る。
これはひどい事です。

私は「多くの人と犬が幸せであるように」と、この仕事をしています。
簡単に治りますよ。なんて、今回は言えない相手ですが『必ず良い子にして見せます』ね。